|
|
|
理想のキッチン(2)
子供が生まれてから外食する機会が激減した。
まず、出産直後は慣れない育児と私の体調不良(子宮筋腫摘出手術を伴う帝王切開の術後の経過が思わしくなかった)で、それどころではなかった。
娘が1歳を過ぎ、1人でトコトコ歩き出すようになった頃、ようやく精神的な余裕が生まれた。
しかし“自分で歩く=好奇心の赴くままに悪さ(!)をする”ということで、そんな少しの間もじっとしていないエイリアンのような子を連れ外食しようという気は起きず、大人しく家で食事する日々。
出産する前は自炊が中心だったものの、こちらはお気軽&お手軽に外食出来るので、仕事で忙しく時間がない時は夫と外での食事を楽しんだ。
行き先は、家ではなかなか食べられない本格イタリアンのお店や新鮮な魚介類が食べられる日本食レストラン。
私たちは普段食べられないものを外で食べ、舌の欲求を満たした。
またウチは会社と住居が一緒になっているので、近くの市場へ食材を買出しに行く以外は下手すると2~3週間外に出ないこともあったので、外食して外の新鮮な空気を吸い、リフレッシュしていたのだ。
最初にキレたのは夫だった。
私の料理に文句を言うようになったのだ。
「おかずの種類が少ない」とか「バリエーションが乏しい」とか「似たようなメニューが続いてる」とか・・・。
つまり、私が料理に手を抜いてる、と言いたかったらしい。
夫は私たちを置いて1人で外に飲み行ったり、食事に行ったりする人ではないので、家での食事に相当フラストレーションが溜まっていたようだ。
こちらで一番手軽でしかも安価に食べられるものというと、地元の食堂や屋台の料理だが、夫は元々タイ料理が苦手なので、余程のことがない限りそれらを口にしようとはしない。
3食キッチリ家で食べるので、フラストレーションが溜まっても仕方ないか・・・。
事実私は指摘されるように、育児に気を取られ、料理に手を抜きがちだった。
ちなみに私は、ある程度おいしくて空腹が満たされれば、たとえ1品料理でも、似たようなメニューが続いても平気なタイプ。
一方夫は、栄養のバランスを考えた飽きのこない料理をコンスタントに食べたいと考えるタイプ。
健康な生活を考えると、夫の考えが正しいのだが。
昔のように自由に外食出来ないのだから、家での食事に対して求めるレベルが高くなるのはわかる。
しかし、元々料理に関しては小姑のようにうるさい夫。舌も肥えてるのでごまかしがきかない。
そんな夫からの要求に、正直気が重くなった。
私をそんな気にさせているもう1つの理由は、件のキッチンだ。
私が暑い時期に家のキッチンで料理することに嫌悪感を抱いてる理由は前回書いたが、実際、キッチンの中にいる私は明らかに殺気立っていて、目はすわり、いつもに増して人相が悪くなっている。
まさに“なんとかに刃物”の世界で、夫は怖がって近寄ろうともしない。
そんな中、我が家一の暴れん坊(娘)がこちらの事情など露とも知らずお構いなしに乱入し、キッチン内を爆走。
そして一番触って欲しくないものに最も興味を示し、手を伸ばすもので私は爆発寸前。
何とか平静を保つよう「チャー・イェンイェン(落ち着いて)」と自分に言い聞かせ、横目で娘の動向をうかがいつつ料理をしようとするのだが、娘はキッチリやらかしてくれる。
その度に私はパニックに・・・。
一度何を間違えたのかグラグラ煮えたぎった鍋の湯の中に自分の手を入れようとしたことがある。
野菜や肉を切ってる時など、何度自分の指を切り落としそうになったことか・・・。
もう我慢も限界!
ということで、私たちの考えた策は、屋外のカフェスペースに簡易キッチンを作ることだった。
屋外なので熱がこもることなく快適に料理出来るだろう。
また、カフェスペースには娘の気を惹く遊び道具がいくつかあるので、料理している私への妨害も少しは減るだろう、という考えだった。〈つづく〉
入り口を除くとキッチン内には窓が一つだけ。
窓からも入り口からも緑が見えるのは嬉しいのだが
もう少し風通しが良ければいいのになー・・・。
◆このコラムは月2~3回不定期の更新です。
日々の細々は うなぎ日記 から随時更新中。
|
|