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理想のキッチン(1)
実はここへ引っ越してきてから、今のキッチンに対して言いようのないストレスを抱えていた。
しかし、キッチンのない狭いボロアパートに住んでた頃のことを思うと文句も言えないな、と自分の中でその気持ちを押し殺してきた。
キッチンに対する鬱憤が爆発しそうになるのは、決まって暑季。
そう、日中の最高気温が40℃前後にもなるという酷暑季だ。
正午になってお日様がてっぺんまで昇った後、気温はグングン上昇する。
暑くて何も手につかないので、エアコン部屋に避難してしばし昼寝。
午後3時頃目を覚まし、自分の部屋へ行って急ぎの仕事をやっつけるのだが、部屋の中はビックリするほど暑い。温度計を見ると38℃を指している。そりゃ暑いはずだ。慌ててPCに扇風機をあてる。
午後4時半頃階下へ降り、晩ご飯の準備に取り掛かるのだが、キッチンの中も自分の部屋とほぼ同じぐらいの温度。
食材を切ったり洗ったりの時点はまだいいが、ひとたび火を使い出すとキッチン内はたちまちサウナ状態になる。
次から次へと止め処なく流れる汗対策にバンダナやタオルを額に巻きつけ料理するのだが、すぐに汗びっしょりになってしまう。
我が家のキッチンの問題点
その1.換気扇がないこと
その2.キッチン内の配置がちぐはぐで合理的でないこと。
こちらは外食産業が発達しているせいか、日常的に料理する人が少ない。
そんな訳で、賃貸の物件でもキッチンなしという物件が案外多かったりする。
我が家には一応キッチンらしき“部屋”があり、他にそれに相当するスペースがなかったので、成り行き上その部屋がキッチンになった。
その部屋には換気扇が付いていなかった。
前述したように、キッチンの文化がなかなか定着しないタイ(特に現代のタイ)では、日本のように“キッチンには当然換気扇が付いているもの”という式が成り立たないのだ。
自分たちで付けようか、と夫と話し合ったこともあったが、部屋の構造から、膨大な労力と時間を要することが容易に推測出来たので、あえなく却下となった。
業者に頼むという手もあったが、こちらの業者の実態(オーダーしたように工事してくれなかったり、工事がいい加減だったり・・・、という話)を知人から嫌というほど聞かされていたので、業者に工事を依頼する気にもなれず、うやむやなままになっていた。
キッチン内の配置については、水道の配管とコンセントの位置、そして業務用巨大冷蔵庫を置く場所を優先に考えると、その他諸々の配置が自ずと決まってきた。
私が一番我慢ならなかったのが、シンクの位置と食材を切ったりする長テーブルが反対側に位置していたこと。
ちなみに、シンクの上に強引にまな板を置き、食材を切ることも出来たが、切ったものを置くスペースがなく、また何かと不便だったのですぐに断念した。
そんなこんなで私は、材料を洗った後ぐるっと180度向きを変え、長テーブルでその材料を切り、まな板や包丁、鍋などが汚れるといちいちぐるっと回って洗い、を繰り返す。
つまり、1人くるくるくるくるバカみたいに回っているのだ。
乾季(寒季)などの涼しい時期ならまだいいが、じっとしていても汗が噴出してくる暑い暑い酷暑季に、冷蔵庫の熱風と鍋にかけた火の熱、しかも換気扇がないので熱がこもりっ放しという部屋(推定室温50℃前後はあるであろう部屋)で1人くるくる回る私。
冗談抜きで目が回り、その場に倒れ込みそうになる。
・・・冷静に考えてみると、キッチン内の強烈な暑さと、この“1人くるくる”が私にはどうしても我慢出来なかったのだ。〈つづく〉
◆このコラムは月2~3回不定期の更新です。
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