手作り絵本・ことば ~海外手作り生活~


庭で歩き回っている娘を見て、お隣のデザインスタジオのG君(タイ人)が

「しっかり歩くようになったね。言葉はどう? 日本語喋ってる?」

と訊いた。
娘は、言葉になっていない言葉(宇宙語?)はうるさいほど喋りまくっているが、ハッキリとした言葉はまだほとんど話していない。
G君には腹違いの1歳半になる妹がいるのだが、G君の話によるとその妹は1歳になる前から喋っていたそうだ。
G君は続けて言った。

「多分混乱してるんだと思うよ。両親、メイドさん、僕ら、みんな話し掛ける言葉が違うからね」

そう言われてみると確かにみんな話し掛ける言葉が少し違う。
まず私と夫は日本語で娘に話し掛ける。
メイドさんは北タイ語とタイ語とたまーに民族の言葉(ラフ語)。メイドさんはIDカードを有するれっきとしたタイ人だが、山岳民族の出身なのだ。
娘と良く遊んでくれるお隣のデザインスタジオの連中は、タイ語と英語と北タイ語。

・・・うむ。混乱している可能性高いかも・・・?


せっかくタイで子育てしているのだから、周りに振り回されず、自分たちのペースでのんびり育児を楽しみたいと思っていた。
現に育児書の類は1冊も持っていないし、ネットで育児サイトをマメにチェックすることもない。
しかし、タイ人の友人たちが揃って「まだ喋らないの?」とあまりに心配してくれるもので、私もにわかに気になり出した。

本当に色んな言葉に混乱していて、小さな頭を悩ませていたら?
ここに住んでいる限り色んな言葉が飛び交う環境は避けられないが、そんな状況を逆手にとって楽しむ方法はないか?
楽しみながら多言語が覚えられる良い方法はないだろうか?
と、1人悶々と考えること数日・・・。

そうだ!! 絵本を作ろう!

かねてから絵本作りには興味があった。
というのも、こちらでは日本の絵本が手に入りにくい。
ほとんどの絵本が日本からの取り寄せになるので、送料を入れると相当な金額になる。 それじゃおいそれと買ってやれない。
“ないものは自分で作ろう”というのがこちらで暮らしていく上での私のポリシーなので、ふと自分で作ってみたくなった。
本や雑誌のページをペラペラめくり眺めるのが好きな娘だから、作った本を気に入るかどうかは別として、きっとすんなり受け入れてくれるだろう。

そうと決まれ善は急げ! と早速その日の晩から制作に取り掛かった。
制作時間は、夜娘が寝た後の数時間。
まずPCソフトを使って絵を描く。
乳幼児向けのいたってシンプルな絵なので、物足りないぐらいあっという間に描けてしまった。
娘は本などのページをめくるのが好きと書いたが、何しろまだ1歳、乱暴に扱うものですぐに破れてしまう。なので、ちょっとやそっとじゃ破けないようひと工夫必要ということで物置部屋を見に行ってみると、粉ミルクの空き箱を発見。台紙として使えそうだ。
私の作業部屋に戻って、部屋の中を見回してみると、無造作に積み重ねている本の間にビニールファイルの束が挟まっているのを発見。
娘は紙を破くだけでなく、口に入れて舐めてふやかしてしまうので、ビニールをかぶせた方がいいと思っていたので、これも使うことにした。

PCで描いた絵をプリントアウトした後、紙を切ったり貼ったりの作業は、次の日の午後ムックが娘をみてくれる時間帯にした。
作業は意外と手間がかかったが、庭のテーブルでコーヒーを飲みながらのんびり進めていると、いつの間にか出来上がっていた。
そんな感じで作った本の名はズバリ“ことば”。
私の手作り絵本第一号だ。




絵本の中身は以下。
1歳の娘に見せるものなので内容はいたってシンプル。というか、簡単な言葉の本ということで作ったので、ストーリーはない。



表紙


P1


P2~P3


P4


P5~P6


P7


P8~P9


P10~P11

ラストのページはおまけ。(↑)
夫の大ファンの娘への特別サービス。
抽象的な絵もいいだろうが、身近な人間の絵があった方が親近感がわくかなと思ったのと、娘が「パパ」と言えるようになったら、夫も大喜びするだろうと思ったから。


さて、娘の反応は・・・?
絵本を見た瞬間、イヒッといたずらっぽく笑い、目をランランとさせながら絵本目掛けて突進。
絵本を手にとり、クンクンクンと犬のように匂いをかいだり、舐めてみたりしている。(←動物かと:爆)
最初は物珍しそうにページをめくるだけだったが、何度も何度もページをめくるうちに娘なりに理解したのか、タイ人の女の子のページを見ると、娘も同じように手を合わせおじぎする。アメリカ人の女の子のページを見ると手を振り、日本人を見ると深めにおじぎしたりしている。
へぇ~、さすが人間の子だな、と感心しながら見ていた。
そんな感じで娘は楽しそうにジェスチャーして見せるのだが、かんじんの言葉が出てこない。
唯一言葉が出るは最後のページだけ。そう、私が意図的に作った“パパのページ”だ。
パパのイラストを見ると大喜びして、大声で「パパ!」「パパ!」と連発している。
最近は、この絵本を見るだけで「パパ!」と・・・。
挙句の果てには、スーパーで買ったミニ絵本(タイ人用・英語訳付き)を見ても「パパ!」「パパ!」。
誰かからもらった本に載っている奇妙な深海魚を見ても「パパ!」「パパ!」。
とにかく何でも「パパ!」「パパ!」。

・・・うーむ。なんだかな~・・・。(泣)

私の意図としては、この絵本を見た娘が「こんにちは」「サワディー・カー(タイ語で“こんにちは”という意味)」「ハロー」の3つの言葉を自然に言えるようになる、ということなのだが、そうは問屋が卸さないようだ。
まぁ、焦らずゆっくりいこうと思う。




・・・そんなこんなで、娘をだしにすっかり自分が楽しんでしまっている。
私は絵本を作ること自体が楽しいし、実験台(娘)がそばにいるので、作ったその場で反応が見れるのが何より嬉しい。
娘も今のところ喜んでくれているようなので、まさに一石二鳥・・・!?

私の絵本作りはまだまだ続きそうだ。



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